列車に乗って、寂れた街にやってきた寡黙な男ミランと、その街に住む元教師の饒舌な男マネスキエが、偶然出会い、互いに予定のある土曜日まで生活を共にする。全く異なる、そして憧れていた人生を、思いがけず目にすることとなる。
パトリス・ルコントというと、ちょっと変わった恋愛モノで有名な監督ですが、ドタバタコメディや哀愁漂うロードムービーなんかも撮っていたりします。
『列車に乗った男』は人生の晩秋に差し掛かった男達の、渋くファンタジーに溢れた作品。最初の出会いは少し強引に思えるけれど、その後はどんどん引き込まれていく。
変化に富んだ、西部劇のような人生に憧れていたマネスキエ。静かにピアノを嗜むような、落ち着いた生活を求めていたミラン。マネスキエはミランに部屋履きの履き方を教え、ミランはマネスキエに銃の扱い方を指南する。
望めば、憧れていた人生を手にすることが出来るかもしれない。けれど、これまで繰り返してきた人生はそう簡単には変えられない。そうして二人は、それぞれの予定ある土曜日を迎える。ラストシーンは切ない現実とも取れるし、美しい夢とも取れる。列車の音と共に、物語は終わる。
主演二人の演技が、本当に素晴らしいです。
マネスキエを演じるのはジャン・ロシュフォール。ルコント作品では常連の俳優です。『髪結い〜』では変な踊りを踊っていましたが、今回はお茶目な紳士。うるさいよ、ってくらい喋りまくりますが、ふと見せる不安そうだったりやるせない表情が絶妙です。
ミランを演じるのはジョニー・アリディ。本職は歌手ですが、ロシュフォールの向こうを張っても全く遜色ありません。この無骨さ! 語らずして背中で語るミランは、まさにはまり役です。
観た後、何とも言えない余韻に浸れます。感動ではなく、じんわり染み込んでくる作品です。